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「神仙沼ってどこにあるの?」

 今回ご紹介する神仙沼(しんせんぬま)は、札幌から車で 2 時間から 2 時間半ほどの場所にある北海道ニセコ連峰を縦断するように走る道「ニセコパノラマライン(道道 66 号線)」の道すがら、標高750m以上の場所にある美しい湿原です。ニセコ町にあると思われがちですが、「らいでんメロン」や「らいでんスイカ」で有名な北海道共和町にあります。
 この地域は「ニセコ小樽積丹海岸国定公園」に指定されていて、高層湿原特有の神秘的・幻想的な風景と、全国的にも貴重な花々や昆虫が見られるトレッキングの隠れ人気スポット。「ニセコエリアで最も美しい湖沼群」として、夏のニセコファンにも知られています。


「皆が神、仙人が住みたまう処。」
 日本ボーイスカウトの生みの親である、下田豊松さんの言葉から「神仙沼」という名前が付けられました。神や仙人が住むような場所をトレッキングするなんて、不思議の世界へ入り込んで行くみたいでワクワクしますよね。
 今回の記事では、夏のトレッキングでしか見られない貴重な高山植物や風景など、北海道の神仙沼湿原トレッキングの魅力を紹介します。

「夏の神仙沼でしか見られない!高山植物お花見トレッキングのススメ!」

 神仙沼といえば昔から紅葉シーズンが人気です。でも最近では紅葉シーズンは人が多すぎて、北海道の大自然をゆっくりと満喫するにはちょっと物足りなさも…。

 そんな北海道通なあなたにオススメなのが、ズバリ「夏の神仙沼」。本州では標高 2,000m 級まで行かなければ見られないトドマツやハイマツなど、高山性の木々が織りなす幻想的な風景、貴重で可愛らしい高山植物の花々。それが周辺の町村から 20 分ほど車を走らせるだけで体験できるんです。運が良ければ「神仙沼湿原の風景を完全独り占め!」という夢のような体験も!?しかも次々とお花が咲き変わるので、訪れる度に違った表情を見せてくれるんです。

 6 月中旬~下旬。ミズバショウ、ザゼンソウ、ミツガシワ(共和町の町花にもなっています。)などが、雪解け水を蓄えた湿原に咲き始めます。ニセコ山系の残雪と白い花々が調和した、北海道の初夏らしい風景です。

 7 月上旬~7 月中旬。ワタスゲがふわふわと風に揺れる中、チングルマ、ショウジョウバカマ、ゼンテイカ(エゾカンゾウ、ニッコウキスゲ)、ヒオウギアヤメなど色とりどりな花々が湿原に彩を与えてくれます。

 7月中旬~下旬。引き続きメルヘンチックなワタスゲの草原に、タチギボウシ、ネムロコウホネ、準絶滅危惧種の可憐なトキソウ、食中植物のモウセンゴケなどなど、多彩な花々が湿原を賑わせます。またこの頃になると、トンボが一斉に羽化を始め、オニヤンマ、ギンヤンマ、オオルリボシ、カオジロトンボ、男の子に人気のピカピカなルリイトトンボなどが、北海道の短い夏を謳歌します。

 8月。すっかり緑色に覆われた神仙沼湿原には、ウメバチソウが古風で奥ゆかしい花を咲かせ、神仙沼のほとりにはサワギキョウが薄紫色の落ち着いた彩りを与えてくれます。トンボも水生昆虫も最盛期。ルリイトトンボの華麗な乱舞に、夏休みの子供たちの歓声が響きます。

神仙沼トレッキングに必要な準備は?

 入り口から神仙沼まで全て木道でつながっているので、特別な装備は必要ありません。普通のスニーカーでも気軽に歩けます。天気や気温は平地とは少し違うので、軽い上着も一枚用意したほうが良いでしょう。

 駐車場に併設されたトイレと神仙沼レストハウスで準備を済ませ、入り口から森の中を歩いて 15 分。突然開ける視界の先には、神秘的な湿原風景が広がります!

 ちなみに神仙沼レストハウスは食事や軽食のメニューも充実。定番の自家焙煎コーヒーや、共和町産のお米や野菜・果物を使ったメニューのほか、「冷やし豆乳坦々麺」や「辛みそラーメン」、「自家製コーンスープ」など、季節に合わせた限定メニューもリピーターを楽しませてくれます。神仙沼湿原トレッキングの後には、各種ランチメニューや倉島牧場牛乳ソフトを使ったスイーツなど、多彩なメニューに目移りするのも楽しいですね。

北海道の自然の奥深さに浸る

 神仙沼湿原のトレッキングを楽しめるのは、6 月~10 月の 5 ヶ月間。ここにアクセスできる道路、ニセコパノラマライン(道道 66 号線)は冬季通行止めになるんです。なにしろニセコ周辺は日本有数の豪雪地帯。道路標識も神仙沼レストハウスのとんがり屋根も、冬の間は雪に埋まってしまいます。

 北海道の短い春・夏・秋の魅力がギュっと詰まった神仙沼湿原。草木や花々が足早にバトンを繋ぎ、昆虫たちが短い地上の生を謳う場所。人気の紅葉シーズンだけでは勿体ない!北海道の隠れた魅力、特別な北海道を探している方には、夏の神仙沼トレッキングを全力でオススメします!

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●この記事を書いてくれた方:うみねこボランチ さん
岩内在住のライター。自然やアウトドア活動、美味しいものが得意分野です。特技は、光の速さで寝落ちすることです。ガイドブックや情報誌では探せない、地元民ならではの視点で皆さまに記事をお届けできたらと思います。