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共和町のアート発信地!西村計雄記念美術館」

札幌から車で約2時間、国道276号を岩内方面に向かう途中でみえてくる、小高い丘の上にそびえ立つ不思議な建物・・・それが西村計雄記念美術館です。ガラス張りの部分と、なだらかな曲線を描くコンクリート造りが特徴の、ちょっと変わった外観をしています。
開館したのは平成11年11月1日。共和町出身の洋画家・西村計雄の作品を中心とした展示や、子供から大人まで、気軽にアートを楽しむことができるさまざまなプログラムを行っています。

(画像:美術館へ遊びに来た共和町のゆるキャラ 共くん和ちゃん)

 

「西村計雄ってどんな人?」

西村計雄(にしむら・けいゆう)は明治42(1909)年、現在の共和町小沢にあたる小澤村で生まれました。父親は共和町の名物「トンネル餅」の創始者・西村久太郎です。
幼い頃から絵に親しんだ西村は、今なお難関である東京藝術大学にストレートで合格!卒業後は東京に住み、風景や花、家族の肖像を題材に制作を続け、数々の展覧会で入選となります。しかし西村が本当に目指したかった表現は日本画壇で評価されず、42歳のとき、決死の思いでフランス・パリへ渡りました。ほどなくしてピカソを育てた画商・カーンワイラーと出会う機会に恵まれ、パリでも有名な画廊で個展を開催。「和菓子の色」と評されたやわらかな色彩と、たおやかな線が特徴の作品は、「東洋と西洋の美を融合した」として高く評価されました。以後40年にわたってパリを拠点に活躍し、世界的に有名な画家となりました。
西村は明治生まれの人ですが、その作品はモダンでみずみずしい感性にあふれています。油絵といえば、厚塗りでつやつやした面的な絵を想像するかと思いますが、西村の作品は日本画のような薄塗りで、かつ骨書きに通じる「線」が主体。日本の伝統的な表現と西洋で発達した画材を組み合わせ、唯一無二の画風を築いたことこそが、フランスをはじめとするヨーロッパ画壇で高い評価を得た所以でもあります。
カーンワイラーは西村を「未来の画家」と呼びました。その作品は時代を越えて、今を生きる私たちに驚きと感動を与え続けています。

(画像 左:1950年代の西村 / 中央:代表作『きもの』1959年 / 右:1994年頃の西村)

 

「いろいろな角度から作品を紹介!展覧会について」

美術館では西村の油彩画作品5,334点のほか、弟子にあたる岩内町出身の洋画家・山岸正巳(やまぎし・まさみ)の油彩・パステル画作品150点を所蔵しています。すべて合わせると5,484点!これらの豊富な所蔵作品をもとに、季節ごとに100点近くを入れ替えながら、さまざまなテーマで展覧会を開催しています。
毎春恒例の「おやこで楽しむ展覧会」は、生き物など身近なものをテーマに、作品に関するクイズを取り入れて、親子や友達とお話しながら楽しく絵を鑑賞してもらうことを目的とした入門的展覧会です。夏にはこれまた恒例、後志管内の5つの美術館・文学館が共通のテーマで同時開催する「しりべしミュージアムロード共同展」を、秋から冬にかけては開館記念展を開催。西村の誕生月である6月と、開館記念日の近い10月には、展示室内でのロビーコンサートを行っています。開館記念コンサートのあとには、美術館ボランティア「フルール」が主催するチーズパーティーも。絵画、音楽、食・・・五感で楽しむこれらのイベントは、開館以来多くの方にお楽しみいただいています。

(画像 左:西村が最も好んだモチーフである花の作品を楽しむ共くん和ちゃん / 右:開館22周年記念コンサートの様子)

 

「子供から大人まで大歓迎!ワークショップ・トライアート」

コンサートのほかにも、イベントはまだまだあります。「トライアート」は、美術館でのアート体験をより身近に楽しんでもらえるよう、毎月1回開催するワークショップです。お正月に凧作りと凧あげ、ハロウィンにかぼちゃのランタンづくりなど季節行事を楽しむ内容や、モダンテクニックを体験できる工作教室を実施しています。
なかでも毎年予約が殺到するのが「こびとづくりに挑戦!」。“美術館に住んでいそうなこびと”をテーマに、フィギュア用の石膏粘土で人形を作るという内容で、完成後は館内に隠し、いつでも遊べる美術館ゲーム「こびと探し」の住人となります。約20人のこびとを探すこのゲームは町内の小学生に大人気ですが、付き添いの親御さんの方が熱中することもしばしば。親子でアート体験を楽しむことができるのも、この美術館ならでは!

(画像 上段左:西村の技法を追体験する油彩画教室 / 上段右:参加者が制作したかぼちゃのランタン)
(画像 下段左:マーブリングを取り入れたアクセサリー制作 / 下段右:2020年生まれのこびと「えのぐさん」)

 

 

「知る人ぞ知る・・・美術館の“映え”スポット」

 展示室での撮影はお断りしていますが、それ以外の館内外には、写真映えするスポットがあります。展示室近くの廊下には西村の二男であり、共和町にあるチーズ工場「クレイル」の創業者・西村公祐さんが制作したステンドグラス「家族の夢」を設置しています。そのままでも見惚れる美しさですが、夏の昼下がりにだけ現れる特別な光景が・・・西日を受けたステンドグラスの色彩が白い壁に投影され、普段は何もない廊下が幻想的な“映え”スポットになるのです。また美術館入り口には、共和町を一望できる「絶景スポット」も。どこまでも広がる田園風景と青い空のコントラストは、記念撮影にぴったりです。

(画像 左:ステンドグラスの廊下 / 中央:ステンドグラスが投影された壁 / 右:絶景スポットで景色を楽しむ共くん和ちゃん)

 

アートを気軽に楽しむことができる西村計雄記念美術館。その魅力を、ほんの少しだけご紹介しました。あとは是非、ご自身の目でお確かめください。ご来館をお待ちしております!

(画像:代表作『花(ひまわり)』と共くん和ちゃん)

 

 

●この記事を書いてくれた方:西村計雄記念美術館の学芸員さん