Gan-wu
岩宇の魅力や情報を日々発信します
ほとんどが地域内消費でなくなってしまう、幻の海苔「天然岩海苔」。
特に北海道の日本海沿岸に生える天然物は品質が良いとされています。しかし、その天然岩海苔が生えるのは1月~3月の北海道の厳冬期、すべて手摘みで採取されるので生産性がとても低い上に、その年の気候によっても左右されます。そんな天然岩海苔の板海苔作りを2016年から始めました。
理由は2つあります。
一つは日本海側の沿岸市町村に住む人にとって大寒の時期の天然岩海苔は寒海苔(かんのり)と呼ばれていて、当たり前のご馳走なのですが、認知度が低い上にほとんどが市場に出回らないので希少価値が高いと感じていた事。又、知人・友人に食してもらうと、とても好評だったからです。
二つ目は海苔作りをする人も高齢化が進んでいて、私ぐらい(現在39歳)の世代の人がほとんどいないのが現状で、この手法と技術を学んで実践しておけば次世代にも引き継ぐことが出来ると思ったからです。
商品化にあたり私は神恵内産の天然岩海苔100%の商品なので「寒海苔」の最初の文字を神恵内の神の字を宛てがい「神海苔(かんのり)」という商品にする事にしました。(商標登録済み)
しかし、海苔作りは自分の想像の10倍きつかったです。厳冬期の北海道は常にマイナス気温、その中で行われる海苔漁(一般の人が勝手に採取すると密漁になります)は手で海苔を掴むため指先が濡れてしまいます。これがとんでもなく冷たい上に腰を屈めて長時間の労働になるので地味だけど重労働です。そして、獲って持ち帰ってからが本番です。
岩盤から剥がすように獲ってくるので小さい小石や小さいツブや砂等不純物を取り除きます。この作業は石取りと呼ばれていて手作業で行います。10枚分の板海苔を作れる量の岩海苔の石取りで大体2時間くらいかかると思います。これを忍耐強く続けなければなりません。
次に天然岩海苔を白樺の丸太の上で包丁で叩き細かく細断していきます。大体5ミリ角くらいを目安に細断します。機械で細断する事も出来るのですが、挽肉を細かくするように擦切る様に細断すると旨味が逃げると教わったので手作業にこだわっています。
そして細かく細断したものを水洗いします。大き目の桶に水をたっぷりはり、少量の岩海苔を入れかき混ぜ少し落ち着かせると石や砂などは沈殿します。その時に表層の海苔を取り出してまた水を加えてという作業を何度も繰り返します。
そうしてようやく「海苔打ち」です。おおきめの四角い容器に水をはり浮力の働く板をひきその上に簾をひきます。木枠で簾を水中に軽く漬かるくらいにして、手で木枠を押さえつけます。木枠の中に岩海苔を入れていきます水中で均一に広がる様に調整をし、力を抜くと浮力で簾が水面に浮上し簾に海苔が張り付きます。厚すぎると食感が良くなく、薄すぎると渇くと穴だらけになります。その狭間を攻めていきます。
その後、寒い倉庫に2日、温かい室内で1日干します。
簾から海苔を外した後にまな板の上で、滑らかな陶器で海苔を擦りさらに不純物を取り除き完成します。
非常に情熱と手間暇をかけて作っている「神海苔」を一度食べてみて欲しいです。
ここ2年ほどコロナ禍で行っていないのですが神海苔作りの製作体験ワークショップというものがありまして、実際に海苔作りを体感してもらい、品物を後日郵送して食してもらう取り組みも新型コロナウイルスの感染状況が落ち着けば再開したいと考えております。
●この記事を書いてくれた方:神恵内村のワーキングファンタジスタさん
神恵内村在住の商店マン。